第1章 情報屋X
降「僕は貴女が何を
考えているのか分からない
…昔からそうだ
何もかも納得出来ない
上手に貴女に乗せられて
いつも貴女の手のひらの上で
転がされている」
『それで良いのよ』
降「納得出来ない」
彼は顔を上げると
私を見下ろした
『何がそんなに不満なのかしら。
組織からあの子を守りたいんでしょ?』
あの子…というのは
零が今想いを寄せている子
降「何処まで調べているんですか」
彼の声は一段と低くなる。
分かりやすくて、可愛いわね
『怒った顔も好きよ』
降「誤魔化さないで下さい
何処まで知っているんですか」
『言ったじゃない
零の全てを知っているって…
可愛いじゃないの、
あの殺したい程憎んでいた男の
彼女だなんて…』
そう、零が想いを寄せている子は
赤井秀一の恋人
降「彼女に手を出したら
貴女を許しません」
彼は私の上から身を引くと
ベッドの端に座った
『手を出しても
私には何も利益が無いわ』
私は体を起こして
彼を背中から抱きしめた
『よく聞いて、
私はいつだって零の味方よ
困ったらいつでも頼りにして』
降「気に入らないんですよ
貴女のそういうところが」
彼は私の手を解き
ベッドから立ち上がった
『私はいつか、こうして零が
私が持つ情報を求めて
私の元に来ると予想していた』
降「何が言いたい」
『零が知らない事を
私は知っているわ。
組織の事、全て…
……知りたい?』
私は立ち上がり彼に近づく
降「結構です」
『あら、そう
いいわ、でもさっき渡した情報は
貴方にあげるわ
組織が関わっている医療機関、研究施設を
リストアップしたファイルよ
折角だからお土産にでも持って帰りなさい』
もう一度背中から抱き締めた
『…あの時はごめんなさいね』
彼は私の手を振りほどき
何も言わずに私の元から立ち去った
今はこれで良い…
組織の情報の一部を渡し
私は零から信頼を得る…
全ての情報は渡さない
少しずつ…少しずつ…
じゃないと会える口実が
無くなってしまうわ
そう思っていたが
事は上手く運ばなかった
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