第8章 四章
みんなが出て行って暫くしてから、5人程が部屋を訪れる気配を感じた。
コンコンコン
「凪緒、入るよ」
そう言って入ってきたのは、彼方・蓮さん・成瀬・輝・折原君の5人。
先程と変わらず黙ったまま虚空を見つめていると、ふわっとやさしい温もりと香りが僕を包んだ。
彼「凪緒、少しだけ俺の話を聞いて」
彼「凪緒は俺が凪緒の味方ってことはわかってると思う。凪緒が思ってる通り、俺は確実に凪緒の味方だよ。そしてここにいる4人もまた、凪緒の味方だ。あらきも、nqrseも、luzも、センラさんも。誰も凪緒が加害者だとは思ってない。各々理由を持って凪緒を信じてるんだ」
確かに彼方のことは必ず味方になってくれると確信していた。それは過去の出来事を知っているから。
彼「でも、俺はまだ4人に理由を話してない。俺と凪緒がこうした疎通が出来ている理由を知らない。凪緒、今ここで話してもいい?そしたら、俺が無条件に凪緒の味方をしている理由を4人は知れて、今より更に凪緒の事を信じることができるんだ。お願い凪緒」
彼方の言う通りなら、あの時のことを話せば4人は凪緒のことを更に強く信じてくれるだろう。
凪(4人なら信じてくれるかな…)
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【あんな女と一緒になったから】
【あの子がいない家に用はないの。あなたたちはもう用済みなのよ】
【女しか産めないなんて、本当に使えない】
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嫌な記憶が蘇る。数々の心無い言葉を浴びせられたあの時の恐怖。不信。嫌悪。
負の感情で頭も胸もパンクしてしまいそうなほど痛みだし、次第に体も震え始める。
彼「凪緒…?」
凪「…ゃだ…やめて…」
彼「大丈夫、俺が付いてるよ」
凪「かなた…かなた…」
まるで存在を確かめるかのように、何か見えない不確かなものに縋るかのように、弱々しい力で彼方の服を掴む。
彼「大丈夫、大丈夫」
凪「かなた…助けて…」
彼「!」
今にも消え入りそうな程か細い声。気を付けなければ聞き逃してしまいそうな程の小さな助けを求める声。
凪「あのときみたいに…『私』をたすけて…!」
5人「!!」
彼「…もちろん。凪緒が安心できるように俺がいるんだから」
おでこをコツンと合わせる。
彼「俺に任せて」
凪「ありがと…」