第4章 二章
ダァン...と、激しくぶつかる音が場内に響き渡る。
その音の発信源である凪緒は今、場内中央で自分より大柄な男子生徒達相手に何本も勝ち続けている。
凪「腰が入ってない。その程度で他校に勝てると思うな」
モブ男「っす!もう一本お願いします!」
1人につき数回の相手をしたら交代という風にコロコロと相手が変わるが、凪緒の表情に疲れの色は全く無い。
その様子を道場の端の方でボーッと眺める棗と翔太。
2人の会話は、場内の緊張した雰囲気とは異なり、和やかな会話をしていた。
96「はぁ〜...やっぱいつ見てもかっこいいなぁ」
天「主将務めるぐらいだもんね。凪緒以上に強いひとっていないんじゃない?多分」
96「そこは自信持とうやww」
ちなみに、凪緒以外の女子部員はロードワーク中である。凪緒は強すぎるあまり、常にほとんどの時間を男子に交ざって練習している。
何度目かのダァン...と激しい音が場内を駆け巡る。
どうやら最後の1人まで順番が回ったようで、男子部員達は揃ってお辞儀をして解散した。
天「凪緒お疲れ様。はい、タオル」
凪「ありがと」
96「凪緒お疲れー!今日もめっちゃカッコよかったで!」
凪「おう、ありがと。今から着替えてくるから、校門前で待っててくんね?」
96「もちろん!じゃあ後でな!」
2人と分かれ、1人女子更衣室に入る。
指定のロッカーを開けると、見慣れない封筒が制服の上に置かれていた。
差出人は不明、宛名の「一条凪緒」と書かれた字も印刷されたものだ。
差出人の情報が一切ない事に警戒しながら、封筒の中身を見る。
その瞬間、凪緒はとんでもない中身に目を見張る。
そして、普段あまり変わることの無い凪緒の表情が、一気に恐怖で青白く変わっていった。
凪「ごめん、待たせた」
96「やっと来た!遅かったなぁ。トイレか?」
凪「まぁ、そんなとこだな」
玄関から2人の元へと駆けて来た凪緒に、翔太は僅かながらも違和感を感じ、じっと見つめる。
視線が気になったのか、凪緒は少し気まずそうに翔太に声をかける。
凪「...翔太?」
天「凪緒、さっきより元気なさそうに見えるけど、何かあった?」
普段は空気読まない癖に、偶にこんな風に勘が鋭い翔太。
部活の疲れだと言えばすんなり信じたが、これからは表情にも気をつけなければと凪緒は自分に言い聞かせた。
