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【キングダム】創作小説《R18/BLあり》

第1章  【R18】仮初め《昌平君×李牧》


差し込む陽射しの眩しさに、李牧は目を覚ました。

髪は乱れ、湿った寝具に包まれた身に、着衣はない。
ひどく物が散乱した、荒れた寝台の上にいた。
傍らでは、端正な顔立ちの男が、つややかな黒髪を掻き乱し、スヤスヤと寝息を立てている。
無論、その身にも、着衣を纏っている様子はない。

李牧は、昨夜の出来事を思い出した。

ゆきずりの相手の誘惑に負けた。
否、そもそも挑発したのは自分ではないのか。
立場や重責を背負う両者が、どうしてこのような事態に踏み込んでしまったのか。
どちらか一方は、冷静に対処できなかったのだろうか。
様々な思考を巡らせて、せめて雰囲気に流された…と思っていたい、という苦し紛れでありきたりな御託を並べてみたが、そもそも問題なのは、トリガーではなくファクトであることに気づく。

秦国の右丞相と、趙国の宰相で、越えてはいけない一線を越えてしまった。
この逢瀬が明るみに出れば、あるまじき愚行、淫乱、破廉恥…数々の烙印を押され、もはや醜態を晒すのみでは済まないであろう。

昨夜の自分は、どうかしていたのだろうか。
さすがに羽目を外しすぎた…と頭を抱える。

カイネたちが、心配しているに違いない。
早いところ身支度をして、戻らねば…と、李牧は寝台から立ちあがった。


身体中に点在している内出血と、響くように鈍い下半身の違和感が、昨夜の激しさを物語る。
李牧は、ヘッピリ腰で歩きながら、着物を探した。


部屋の扉の真横にある木製の椅子に、李牧の着物は軽く畳まれた状態で置かれていた。

男同士の情事…室内には、汗と、体液と、汚物と、血の混じった臭いが充満していたが、見渡す限り上衣にも下衣にも汚れや皺はついていない。
寝台とは少し距離があったため、また真横の入口扉が通気口の役割も備えていたため、臭いもさほどついていなかった。

綺麗なコバルトブルーに発色する、見慣れた着物を身に纏うと、少し普段の自分に戻った気がした。
李牧は、着物が置いてあった椅子に腰掛け、慣れた手付きで髪を結い上げる。
露わになる、首筋やうなじにも、昨夜の爪痕は見当たらない。
幸いなことに、身体中に花咲く内出血は、すべて着物で隠せる位置であったことに、李牧は安堵した。








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