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【キングダム】創作小説《R18/BLあり》

第1章  【R18】仮初め《昌平君×李牧》


昌平君は、左の口角だけを少し上げ、フッと微笑んだ。

本当に、憎くて小癪な男だと感じる。

この男は、掴めそうで掴めない。
これまでの戦歴でも、目の前で素肌をさらけ出している今宵も、それは変わらない。
触ることはできても掴むことのできない、まるで水のような存在だ。



「それならば、俺も遠慮なくやらせてもらおうか。」

昌平君は、李牧を抱き寄せる。
先ほど果てたばかりだが、すでに身体の準備は整っていた。

無論、李牧とて同じである。



それからは、互いが互いを求めるように、貪り合った。

愛情だとか慕情だとか、そんな神秘めいた軽薄な感情は持ち合わせていない。
ただ、自分自身の満たされぬ部分を埋めるために、目の前の虚像を通して、欲望を振り回す。
突き上げる慟哭を昇華させるように、己を愛す。



昌平君は、徐ろに立ち上がり、香油を取り出した。
乳香と呼ばれるそれは、気高く芳醇な香りを漂わせている。
特定の樹脂からしか生産できない、希少価値の高い精油である。

昌平君は、李牧を四つん這いにさせると、殺菌作用のあるその精油を惜しみなく使い、下半身の後ろに秘められていた窪みに手を伸ばした。


「初めてか?」
長くしなやかな指で、丁寧に解きほぐしながら、昌平君は問う。

「いえ。」
合従軍戦の代償が、一瞬、李牧の脳裏をかすめた。



「…初めてではありませんが、お手柔らかにお願いします。」
少し間を開けて、李牧は続けた。



「そうか…。……善処する。」
優しく指先を動かし続ける昌平君。



「…俺は初めてだ。痛かったら遠慮なく言え。」
昌平君は、独り言のように呟いた。




今、目の前の男は、自分自身の化身である。

この男の渇きは、自分自身の渇き。
この男の悦びは、自分自身の悦び。
この男の痛みは、自分自身の痛み。
この男の安らぎは、自分自身の安らぎ。
この男の苦しみは、自分自身の苦しみ。
この男の虚しさは、自分自身の虚しさ。
この男の叫びは、自分自身の叫び。

今宵に限っては、この男の満足こそが、如実に己を反映する鏡だ。




「……」

この時の李牧は、昌平君の指を体内に挿入され、快楽とも苦悶ともつかない不思議な感覚に、唇を噛み締めていた。
敏感な部分に刺激を受け言葉は出ないが、昌平君の不器用な優しさは十分に感じとった。
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