第8章 死に物狂いの鬼ごっこ
雪が集合場所に戻ると、そこには途中で捕まったであろう隊士達が山積みされていた。
「こいつらは修行のやり直しだ!俺が連れ帰って派手に叩き直してやる!」
「俺にも半分寄越せやァ。」
「いいだろう、不死川。」
「「「(ご愁傷様)」」」
特にスパルタで有名なトップ2に持ち帰られる事となった隊士達に、生き残った隊士達は憐れみを向ける。
『…これだけ?』
周りを見渡すと、無事に戻ってきたのは両手に入る程度の人数しかいなかった。
いかに柱が強いか、
いかに自分たちか未熟か、
それらを痛感する結果となった。
そして、息も切れ切れな自分たちと違って、柱の面々は息一つ乱れていない。
え?どこまで体力あるんですか?ヤバっ…
というくらい平然としていた。
「今ここに残っている君達は合格者だ!今日を含めた3日間は、お館様からの褒美で任務が休みとなる!十分に体を休めるといい!では、解散だ!」
杏寿郎の言葉を聞いて、隊士達から喜びの声が上がる…かと思いきや、体力の限界を迎えていた隊士達は動くことが出来ない。
雪もその言葉を聞いて安心し、一気に体の力が抜けてその場に座り込んでしまう。
「雪。よく頑張ったな!」
『わっ、』
目の前に現れた杏寿郎が、頭をわしゃわしゃと撫でる。
雪は気恥ずかしかったが、嬉しくもあり大人しく撫でられる。
「煉獄さん、ダメですよ〜。もっと優しく撫でてあげないと。」
『胡蝶様…お疲れ様でした。』
「お疲れ様です。」
「むぅ!難しいな!こう、だろうか…?」
まだ強さはあるものの、先ほどよりは優しくなった杏寿郎の手。雪は目を細めて笑った。
『師範、さっきより優しくなってます!』
「そ、そうか……」
「あらあら。さて、私も帰りましょう。」
『お疲れ様でした!貴重なお時間、ありがとうございました!』
「また任務でお会い出来ると良いですね。」
そう告げると、しのぶはふわっと姿を消した。
気づけば杏寿郎と雪のみ残っている状態だった。
『師範の顔に、泥を塗るような結果にならなくて安心しました。』
「俺は信じていたぞ!必ず逃げ切るとな!」
『そのお言葉が何よりも嬉しいです!』