第7章 破壊力抜群
2人が部屋に入ると、タイミングよく夕餉が用意されていた。
『女将さんが用意してくださったみたいですね。』
「うむ!いただくとしよう!」
テーブルを挟んで食事を取る。
その間も雪は下向き加減でご飯を食べる。そんな雪を京治郎が不審に思わないはずがなく…
「よもや!疲れてしまったか?」
『い、いえ!全然大丈夫です!』
「…雪、こちらを見なさい。」
『…り、です。』
「雪?」
杏寿郎に促されるも、雪は正面を向けなかった。
先ほど来ていた着物のまま食事を取る杏寿郎。羽織はさすがに脱いでいるが、それでも漂う色気が強すぎるのだった。
『むむむ無理です!師範の顔は見れません!』
「よもや!それは何故だ!」
折れない2人。
『み、見れません!』
「そこまで拒絶されると、さすがの俺でも傷つくのだがな!」
『……っ、』
「!」
意を決した雪は、バッと勢いよく顔を上げて杏寿郎を見た。茹で蛸のように真っ赤で、困った表情をする雪を見て杏寿郎の息が詰まる。
「よもや、真っ赤ではないか。」
『師範のせいですからねっ!目のやり場にこまるんです!』
顔を赤くしながらも一生懸命怒ってくる雪に、杏寿郎は意地悪をしたくなった。
箸を置き、雪の横に移動する。
「目のやり場に困る…とは、どんな状況だろうか?」
『し、師範!ワザとやってますよね?!』
目線を合わせようとしない雪を覗き込む杏寿郎。
くいっと顎を掴んで上を任せ。
「何のことだろうか?」
『〜〜〜っ!!!』
「教えてくれないか?」
『…が、』
「が?」
『眼帯です!師範の眼帯姿がカッコ良すぎるんですっ!!』
「……」
『……い、言いましたからね。…』
目線だけ晒す雪に、杏寿郎は声に出して笑う。
「はっはっは!そうだったのか!何も特別な事ではないぞ?宇髄もしているではないか!」
『それは、そうですけど……っ、』
確かに、音柱である宇髄天元も同じように黒い眼帯をしている。しかし、雪は全然平気で躊躇はない。
杏寿郎の姿にだけ反応してしまう…
これがどういう意味なのかは雪は分からないでいた。