第6章 無限列車〜救済〜
「伊之助!動けっ!!煉獄さんと雪さんのためにっ!!!」
「!…獣の呼吸 壱ノ牙 穿ち抜き…っ!」
伊之助の攻撃が当たろうとした時、凄まじい衝撃が襲う。
何と、猗窩座が自分の腕を引きちぎり、そのまま森の中へと逃げていく。
その姿を炭治郎は必死に追いかけ、自身の日輪刀を投げる。
「逃げるな、卑怯者!!逃げるなぁ!」
炭治郎の言葉に猗窩座は反応するも、今はとにかく陽の光から逃げるために走り続ける。
「いつだって鬼殺隊は、お前らに有利な暗闇の中で戦ってるんだ!!!逃げるな、馬鹿野郎!卑怯者!!」
『がはっ…』
「雪!!何て馬鹿な事をしたんだっ!!!」
『だ…って、し、はんを死なせる…わけには』
「だからって、無謀すぎる!」
駆けつけた隠たちによって、乗客の救出と手当てが行われた。
その間にも、雪の肩からは血が止めどなく流れていた。
『師範、だって…目もやられ、て…内臓だって、傷ついてる……じゃないです、か…』
そう言ってヘラっと笑う雪に、杏寿郎は胸の奥が締め付けられる思いだった。
担架に乗せられた雪は応急処置を受け、そのまま蝶屋敷へ搬送されていった。遅れて、重症だった杏寿郎も搬送された。
残された炭治郎・伊之助・善逸は、無限列車で起こった戦いや、柱である事の強さを目の当たりにし、自分たちの非力さや不甲斐なさに酷く打ちのめされていた。
「悔しいなぁ。何か一つできるようになっても、またすぐ目の前に分厚い壁があるんだ。凄い人はもっとずっと先の所で戦っているのに、俺はまだそこにいけない。」
「弱気な事言ってんじゃねぇ!!なれるかなれねぇかなんて、くだらねぇ事言うんじゃねぇ!!」
隠たちに促されるまで、3人はその場で泣き続けていた。
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ー母上、俺はちゃんとやれただろうかー
ーやるべきこと、果たすべきことを全うできましたか?ー
ー杏寿郎、あなたは立派にやれましたよー
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「…っ…ここ、は…蝶屋敷か…」
杏寿郎が目を覚ますと、見知った天井が目に映る。
これまでの任務で幾度か世話になった場所だった。
夢の中に出てきた母の言葉を、杏寿郎はぐっと噛み締めていた。
「…目が覚めましたか。」
「…胡蝶、」