第6章 無限列車〜救済〜
「俺がうたた寝している間に、こんな事態になっていようとは!」
『車両全体が血鬼術の対象になっていましたから、どうしようもありませんでした。』
「よもや、よもやだ。柱として不甲斐なし!穴があったら…入りたいっ!」
『っ!』
杏寿郎が言い終わるや否や、物凄いスピードで車両を駆け抜けていく。
一人取り残された雪は、伸びてくる触手を切り刻んでいく。
『これ、かなり細かく切り込んでいかないと…すぐに再生する!』
ある程度、触手を抑え込んだところで杏寿郎が戻ってきた。
「竈門少年と猪頭少年に指示を出してきた!俺たちは後方5車両を守るぞ!」
『はいっ!…炎の呼吸、壱ノ型…不知火!!』
「雪!これも修行と思って、技の精度を意識するんだ!」
『はいっ、師範!』
次から次へと再生する触手を、杏寿郎と2人で切り刻んでいく。
どのくらい戦っていただろうか…突如、大きな音がして車両が大きく傾き始めた。
『ぅわっ!?』
「脱線するぞ!技を繰り出せ!!」
「『肆ノ型、盛炎のうねり!』」
地面に接触する前に肆ノ型で衝撃を吸収するように連投する。
雪は休むことなく型を連投した反動で、目が霞み、手に力が入らなくなってきている。それでも、気力で持ち堪えるしか無かった。
しかし、己の師範である杏寿郎は涼しい顔をして次々と繰り出していく。
これが柱と一般隊士との差。
瞬時の判断力・体力・気力・精神力・技の威力・精度…
どれかが欠けても成立しない。全てを鍛え上げた最高レベル。
『(…こんな姿を見せつけられて、根を上げるなんで出来ない!)』
雪も負けじと食らいつく。
そして、ついに列車の動きが止まった。
『…と、止まった…』
「よくやったな!ひとまず、前方車両の少年たちの様子を見てくる!」
そう言って、杏寿郎は姿を消した。
雪はその場で片膝をついて、体を休める。
『怪我人は多いけど、何とか食い止めれて良かった…』
安堵の息をもらす。
全集中で乱れた呼吸を整えつつ、体力回復に集中する。
『(…あと少ししたら、私も師範のところに行こう……!?この気配はっ!!)』
突如感じる強力な鬼の気配。
これはー
『まさか、上弦!?』
体力の回復もそこそこに、急いで前方へ向かう。