第6章 無限列車〜救済〜
ーうまいっ!ー
『あ、師範見っけ。』
何両か前に移動した時に、微かに杏寿郎の声が聞こえた。
これ以上は近づけないと判断し、雪は2両手前で様子を伺うことにした。
しかし、途中で誰かに声をかけられては見つかる可能性が高くなってしまうため、連結部分にいることに。
『(ここなら、いざとなれば屋根に上がっちゃえば大丈夫だもんね…私、無賃乗車だし…)』
※本来はダメですよ!
しばらくして、車掌が乗客の切符を切りに車両を回るのが見えた。
瞬時に身を隠しやり過ごす。
『(…ん?様子がおかしい…)』
車掌が切符に切り込みを入れられた乗客は、皆、眠ってしまったようだ。その様子に違和感を感じた雪は、乗客の1人に声をかける。
『すみません。あの!すみません!…起きない…』
声をかけるも一向に起きる気配がない。
列車が走る音だけがやけに耳に残る。
『これはまずいな…』
雪は異変を感じ、杏寿郎の元へ走る。
しかし、駆けつけた時にはすでに遅く、杏寿郎も眠ってしまっていた。
『師範、師範!起きてください!師範!!』
揺さぶっても、頬を叩いても、一向に起きる気配がない。
ふと周りを見れば、同じ隊服を来た隊士たちも一様に眠ってしまっている。
『この子たちもダメか…!?』
雪がどうしたものかと考えていると、目の前を高速で何かが横切る。顔を上げると、女の子の首を掴む杏寿郎の姿が目に入る。
『ちょ、師範!?離してくださいっ…死んじゃいます!一般人の女の子ですよ!…もう!力が強いなぁ!!!』
雪が全力で引っ張るもびくともしない。
もしかして、起きてるんじゃ?と思い確認するも、目はしっかり閉じられており覚醒している様子はない。
『何なの?!このバカ力は!…』
必死に杏寿郎の腕を引っ張っていると、ふいに裾を引っ張る感覚を感じ、そっちへ目線をやる。
『女の、子?…竹…あ!師範が言ってた鬼の女の子だね!』
竹を加えた女の子…襧豆子が雪の羽織りを引っ張っていた。
雪が話かけるも、襧豆子は市松模様の羽織りを着た男の子の方へ走っていき、何やら手を動かしている。
『?何をやって…』
ゴチンッ!ー