第5章 あなたの色に染まる心
『(何か、初めて会うのに煉獄先生の言葉には逆らえないような…)』
どこかで会ったことあるっけ?と漠然と考えていたら、あっという間にお昼になってしまった。
「今日の雪、ずっと上の空だね。」
『そうなんだよね…何か、煉獄先生の事が気になって…』
「!…雪?」
『あ!違うよ?!恋愛とかそう言うのじゃなくて、なんて言うんだろう?もっと深いような…』
「…そっか。」
『?』
お昼休みの時間に杏寿郎の事についてカナヲに話してみたが、何故か悲しそうな嬉しそうな…どちらにも読み取れる表情をするカナヲに雪は首をかしげる。
しかし、どう考えても答えは出ないし、このまま考えていても埒があかないので放課後の時に直接聞くことにした。
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『失礼します。白羽 雪ですが、煉獄先生いらっしゃいますか?』
「来たな!すまないが、奥まで来てくれないか?手が離せなくてな!」
『はい、失礼します!』
資料室を訪れると、奥の方から杏寿郎の声が響く。
ここでもまた、雪は言葉にすんなりと従ってしまう。
『(生徒が教師の言う事を聞くのは普通なんだけど…何だろう、この変な感じは……)』
雪が奥へ進むと、両手一杯はもちろん、頭の上にまで本を乗せている杏寿郎が目に入る。
『れ、煉獄先生?!…ちょっと待ってください!』
素早く駆け寄ると、ひとまず片方の手に乗せられた本を受け取る。しかし、冊数が多く両手で持つ雪でさえよろめく重さだった。
『(こんな量を軽々と…先生何者?!)』
「わっはっは!前任の先生がどのような分野にご興味があったのか知りたくてな!整理をしていたら途方もなくなってしまった!!」
そういう杏寿郎の周りを見ると、そこにはいくつもの本の山が出来ていた。つまり…
『片付けを手伝うと…』
「話が早くて助かる!!」
『……』
「終わったらお礼にお茶でも奢ろう!」
『やります今すぐにやります。』
そこからの作業は早かった。
ある程度、杏寿郎が分野ごとに分けていたおかげでもある。