第4章 私を受け止めてくれた太陽
雪は鬼の前に飛び出し、隠していた脇差を取り出す。
以前に使っていた日輪刀を無理言って、脇差として作り直してもらっていたのだった。
「そんな小さな刀で俺を殺るつもりかぁ???」
『ニタニタと気持ち悪い。これ以上、仲間を傷つけるな。』
グッと右手に力を入れるも、上手く動かす事が出来ない。鬼に悟られないように左手を添えているが、雪は一か八かの賭けだった。
「そんなに死にたければ、お前から殺ってやるよ!」
「それは無理だな!」
『き、杏寿郎様?!』
鬼がかかって来たと同時に、杏寿郎の日輪刀が2人の間に割って入る。鬼の攻撃を止めつつ、雪を後方に下がらせる。
「ぎゃぁぁぁっ!」
一際大きい断末魔が響いたと思えば、鬼は灰と化していた。
一旦はその場を去った杏寿郎だが、何やら胸騒ぎがして戻って来たのだという。
「雪、無事か?」
『はい。ありがとうございました。』
「……」
杏寿郎が振り向く前に脇差を隠し、何事もなかったように振る舞う。本当に全てが終わったと安堵の息をつくと、他の隠からボソボソと声が上がる。
「元鬼殺隊だったんだろ?」
「鬼殺隊員として使えないって本当だったんだな。」
「戦ってくれれば犠牲者も出なかったのに。」
「自分だけ柱様に助けてもらっちゃって。」
『……』
これ程までに悔しい思いをしたのはあっただろうか。
思うように戦えない事に、一番不甲斐なさを感じているのは雪自身だ。
決して泣くもんかと、手を握り締め耐える。その手からは血が滲み出ていた。そんな雪の手を、杏寿郎はそっと握り声を張り上げる。
「この中に、少しでも鬼に立ち向かった者はいるか?!」
「「「「?!」」」」
「鬼殺隊ではない者が、鬼と対峙するのがどれだけ危険なことか、君たちが1番良く分かってるはずだ!」
『杏寿郎、様…』
「なのに、己の命を顧みずに勇敢に立ち向かっている者に対して、感謝の言葉が出ないのはどういう事だ?!」
杏寿郎の言葉に、誰も話さなくなった。
そんな隠達を一瞥すると、雪を抱き上げその場を去る。
「雪、少し辛抱してくれ。」
『え、わっ!…杏寿郎様?!!』
雪を抱え上げて…いわゆる、お姫様抱っこの状態で杏寿郎は帰路に着く。