第4章 私を受け止めてくれた太陽
"ありのままの君を受け入れてくれる人を見つける事だよ。"
『ありのままの私を…か。そんな人が同じ鬼殺隊員の中でいるのかな…』
そう言って、雪は自分の胸元に視線を落とす。
そこには、左肩から右脇腹、そして右腕にかけて1本に繋がる傷痕があった。
実は雪は、2年ほど前まで鬼殺隊員として鬼狩りの任務に就いていた。しかし、鬼との戦いの中で重傷を負い、剣が握れなくなってしまった。途方に暮れていた時、お館様から経験を生かして隠として後方支援を勧められ、昨日まで仕事をしていた。
事情を知っているのは、治療に当たった蟲柱である胡蝶しのぶと、当時の隠の数名だけ。お館様から直々に口外無用のお達しが出たため知る人は少なかった。
しかし、人の口とは何と軽いものか…雪が隠として仕事をするようになってから、あちこちで陰口を叩かれるようになってしまった。
ー鬼殺隊としての仕事を全う出来ない半端者ー
ーお館様に取り入ったー
ーお館様の次は炎柱様?どれだけ取り入れば気が済むのー
受け入れ難い言葉だったが、それらの言葉は当人である雪が一番感じていた。
そう思われても仕方がない。でも、本当は鬼殺隊員としてもっと役に立ちたかった…
隠としての自分に自信が持てなくなった矢先に、炎柱の支援係の話が舞い込んできたので、お館様は一体どれだけの事を見ているのだろうか…と雪も敬服の念を抱かざるを得なかった。
『もっと右手が動いていたら…今でも剣を握れてたのかな…』
右手を動かしてみるものの、思った動きがすぐに取れない。
これでは話にならないと、雪は考えるのを辞めて風呂から上がった。
居間へ行くと、縁側で杏寿郎が涼んでいる所だった。
『炎柱様、風邪を引かれてしまいます。何か羽織る物を…』
「いや、かまわん!君もどうだ?」
『では…失礼します。』
杏寿郎から少し離れた場所に腰を下ろした雪は、そのまま月明かりに照らされた庭を眺める。
すると、杏寿郎が話し始めた。
「お館様から文が届いた時は驚いた!」
『突然、でしたでしょう?』
「うむ!しかし、俺も任務で多忙だからな、家の事にまで手が回らないので助かった!」
『ふふ、そう言って頂けると来た甲斐があります。』
「雪…と言ったか。」