怨念の一輪草【終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅】
第7章 選抜術式試験
深夜
「征志郎はそんなに強くない」
「!」
征志郎をよく知っているであろう深夜の口からそんな事を聞けるとは思わなかった。
驚いて思わず目を見開く。
深夜
「もちろん柊にしてはって事で、そこら辺の生徒なんかよりは断然強いよ」
「…でも自分よりは弱いって?」
深夜
「ふふ」
私の質問に深夜は笑みを浮かべている。
否定する様子もないし、恐らくこれはあっているのだ。
「征志郎の事を自分より弱いとみてるから、昨日あなたは抵抗せずに殴られた」
深夜
「うん。抵抗すると面倒だし、なにより征志郎に殴られても僕は平気だしね」
「じゃああの時の征志郎は手加減をしていた訳じゃないんだ…」
柊にしては遅いと思った。
それは一瀬の人間に本気を出す必要がないと判断したからだろうと勝手に思っていたが、あれが征志郎の実力だったらしい。
深夜
「で、勝てそう?」
「…私は征志郎と試合で当たらないはずだけど?」
思いがけない言葉に動揺しそうになる。
私が征志郎を狙っていると気づいたのか。
焦るが、平静を装って質問を質問で返した。
深夜
「単純に実力の話だよ。僕は愛梨ちゃんの方が強いと思うんだけど」
「………」
深夜
「どう?」
至近距離で目を合わせる。
深夜は面白がっているというより、興味を持って聞いている様に見えた。
「どうだろうね」