怨念の一輪草【終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅】
第7章 選抜術式試験
深夜
「今さ、反応するんじゃなかったって思ったでしょ?」
「そんな事を深夜様に対して思う訳ないじゃないですか」
ちゃんと人前なので私は笑顔で対応していた。
だから傍から見ればそんな態度を取っていたようには見えないので、私は淡々と言い返す。
深夜
「愛梨ちゃんは気づいてないんだろうけどさ。よーく見ると考えてる事わかりやすいんだよね」
「…初めて言われたんだけど」
深夜
「そう?それは嬉しいな」
柊の人間を殺すという規格外な目的を持って侵入している私からすると、それは最大の屈辱だった。
だから思わず敬語が抜けて素で話してしまう。
深夜
「まあ他の人達はこんな大人しそうな愛梨ちゃんに裏の顔があるなんて思いもしないだろうけど」
「…いらないフォローをありがとう」
深夜
「いえいえ。でも昨日のはまずかったんじゃない?」
「昨日?」
昨日というのは十中八九、廊下での件だ。
深夜
「あの時、周りから愛梨ちゃんは空気を読まずに征志郎達の横を通り過ぎた生徒に見えたはずだけど…違うよね」
「………」
深夜
「君は征志郎に殴られそうになったあの子の服を引っ張ってバランスを崩し、助けようとした。まあ僕が腕を掴んだから結局殴られる事はなかったんだけど」
私の行動に気づいていた深夜。
それなら征志郎にも気づかれたかもしれない。