怨念の一輪草【終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅】
第7章 選抜術式試験
従者の様な女
「征志郎様?」
2人が去って行ったのを確認してから私もトイレに入ろうとした時、思ったより近くで先程の女の声がした。
「?」
9組へと行ったのではないかと気になり振り返ってみる。
征志郎
「………」
「…!」
征志郎は立ち止まって私を見ていた。
何かおかしな行動をとってしまっただろうか。
この男の評価は兄弟の中でもずば抜けて低いはずだが、もしかすると只者ではないのかもしれない。
冷や汗をかきそうになりながらも平静を装って前を向く。
従者の様な女
「あの女がどうかしましたか?」
征志郎
「いや、見た事がある気がしただけだ」
従者の様な女
「幹部級の子息ではなさそうですけど…」
征志郎
「気にしなくていい。あれくらいの女はどこにでもいるだろ」
そんな会話をしながら今度こそ2人の声は遠ざかっていった。
それからすぐにトイレへと入り、髪を直すふりをして鏡を見る。
「………」
私の顔はいつもの愛想笑いではなく、引き攣った笑顔を浮かべていた。
さすがに最後の侮辱とも取れるあの発言は頭にきたのだ。
あんな男の婚約者にならなくて良かった。
心の底からそう思い、私はトイレを後にする。
「…何?」
すると、9組の前に人集りができていた。
征志郎
「あ、ごめんごめん。足が滑った」
取り巻きの生徒達
「ははは!」
響く笑い声。