怨念の一輪草【終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅】
第6章 始まった学校生活
彼に運ばせていいものだろうか。
この学校でのグレンと五士の立場を考えて、躊躇してしまう。
美十
「気にしなくていいのよ。無理しないであいつに運ばせなさい」
「…はい」
でもこう言われては頷くしかなかった。
ちゃんと医務室に運んでくれるなら私はもう用無しだ。
五士
「じゃあ案内してくれる?」
だからここから離れようとした時にされたまさかの提案。
「私が、ですか?」
五士
「そうそう。どうせ運ぶなら可愛い子と一緒に行きたいだろ?」
「………」
こんな状況な上、言われ慣れない言葉で私は反応に困ってしまった。
美十
「あなたはこんな時にまで…!!」
五士
「ほらうるさい奴はおいて行くぞー」
「え…」
軽々とグレンを担ぎあげた五士。
彼は美十の小言を聞かずに私へと笑いかけると、さっさと校舎の方へ歩き始めた。
案内しろと言われたので私もついて行くしかない。
「えっと、失礼します」
一応美十へそう断りを入れてから五士の後を追った。
*****
五士はちゃんとグレンを医務室まで運んでくれた。
ベッドに寝かせた後、手術が必要らしいので私達は部屋を出る。
五士
「愛梨ちゃんは優しいんだねぇ〜」
「そうですか?」
五士
「だって誰も動かない中、愛梨ちゃんだけがあいつを助けようとしただろ?」