怨念の一輪草【終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅】
第5章 高校への入学
深夜
「いいや、聞こえてたね」
普通の態度で聞き返すが、深夜は引いてくれなかった。
それも鎌をかけるのではなく確信を持って聞いている。
「えっと…」
だから私は本当にわからないと言いたげに戸惑いを見せ、言葉を詰まらせた。
これで大抵の人は誤魔化せる。
深夜
「………」
深夜は私の様子をじっと見ていた。
深夜
「ごめんね、勘違いしてたみたいだよ」
そして案の定深夜は謝ってきた。
これで一安心だ。
そう思って私は首を振る。
「いえ、気にしないでくださ…」
深夜
「君は普通の生徒じゃなくてこちら側だったんだね」
私は笑顔で話を終わらせようとした。
でも深夜はそれを遮って私との距離を詰めると、潜めた声で意味深な事を言い始める。
「え…?」
言っている事の意味がわからず、思わず素で声を出していた。
柊の事を敬っている他の生徒から浮かない様に被っていた仮面にヒビが入る。
深夜
「ふふっ」
そんな私を見て深夜は楽しそうに笑っていた。
まるで良い獲物を見つけたハンターの様な好戦的な笑顔。
「………」
取り繕ってももう遅い。
そう判断した私は貼り付けていた笑顔を取った。
深夜
「そうそう、君もグレンも素で行こうよ」
「一瀬 グレンと一緒にしないでください」
私の事はともかく、一瀬との関係だけは絶対に気づかれてはいけない。