怨念の一輪草【終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅】
第10章 本当の実力と柊のやり方
そう言って深夜はカバンを自身の席に置いてから、グレンの机へと浅く腰掛けた。
「さすが深夜。ちょうど気になって待ってたとこだよ」
深夜
「そうだと思ったよ。じゃあグレンに関する噂って事は耳に入ってるよね?」
「うん」
むしろ私はそれしか知らない。
そういう意味も全て込めて頷くと、深夜は笑みを深くして立ち上がる。
「……近くない?」
そして私の椅子の背もたれに手を置き、グッと私の耳元へと顔を近づけてきた。
後ろから密着される体制につい動揺してしまう。
深夜
「さすがに内緒話にしなきゃだし仕方ないよ」
「だからって……」
深夜
「ほーら、早く聞かないと担任来ちゃうんじゃない?」
「……っ」
この体制はともかく、深夜の言う通りなのは確かだ。
文句を言うより我慢して話を先延ばしにされない方がいいに決まっている。
深夜
「期待通りの反応してくれるから愛梨ちゃんといると楽しいな」
「嬉しくない言葉ありがとう」
深夜
「いえいえ」
これでおふざけの時間は終わり。
距離はそのままだが、深夜の顔つきが少し真面目なものへと変化する。
深夜
「昨日、拷問が終わってグレンは解放された」
「!」
解放されたという事はグレンはほぼ情報を漏らさずに、疑いを多少なりとも晴らしたのだ。
この数日間もの間、厳しい拷問に耐え抜いたのはさすがと言えるだろう。
「仲間が減らなくてよかったね」
深夜
「まあね。とりあえずは及第点ってところじゃないかな〜」
「嬉しいくせに」
あの隠していた実力を見た後だ。