怨念の一輪草【終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅】
第10章 本当の実力と柊のやり方
「……そうだね」
その言葉にどれだけ心がこもっているのか私にはわからない。
でも安心させようとしてくれているのがわからない程、私は鈍感ではない。
だから不安な気持ちを抱えたままではあるが、深夜の言葉に深く頷いた。
*****
グレンが柊 暮人によって拘束されてから数日後。
私は後ろの席が不在なこと以外は特に変わりのない学校生活を過ごしていた。
担任はグレンの欠席について当然のように触れる事はなかったのだが、今日はクラスメイトの様子がおかしい。
男子生徒1
「おい、一瀬の噂聞いたか?」
男子生徒2
「ああ…。マジなら俺達やばくね?」
女子生徒
「本当だからこそ深夜様が声をかけていたのよ…」
「?」
いつも以上にざわついている事に違和感を持ち、耳を澄ますもグレンが話題に上がっていることしか分からなかった。
いったいグレンについての何が噂になっているのかすごく気になる。
でも私が気軽に話しかけられる相手なんてあいつしかいないのだ。
「………」
時間を確認するが、あいつが登校してくるのはもう少し先だろう。
待つしかない、そう思って机に突っ伏す。
もちろんこんな所で呑気に寝たりはしない。
でも目を閉じて体から力を抜いた時だった。
「!」
頭に感じた軽い重み。
そんな事をする相手なんてわかっていたが、私の頭に手を置いたのは予想通りの男だった。
深夜
「おはよ」
「おはよ。いつもより少し早いね」
深夜
「いやー、愛梨ちゃんが気になってるであろう噂について教えてあげなきゃって思って早く来たんだよね」