怨念の一輪草【終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅】
第10章 本当の実力と柊のやり方
彼の興味はグレンにしかないようで、怪我をしている深夜の事も一切気にしなかった。
だからじっとしていたお陰で少しは動けるようになった深夜を連れて向かったのは、自分の家。
深夜
「僕を連れて来てよかったの?」
「だってここ以外に落ち着ける場所ないじゃない」
医務室に連れて行く事も考えたが、義理とはいえ負傷した兄弟を微塵も気にしない暮人を見た後だ。
そんな暮人が一番権力を持つ学校内で手当てなんてまともにできる気がしない。
そうなると行ける場所は私の家か深夜の家になる。
深夜
「でも女の子が男を簡単に部屋に入れちゃダメだよ」
「……いきなり女の子扱いされても反応に困るんだけど」
深夜
「あ、照れてる」
「うるさい」
殴られた時に切れたであろう口元にわざと消毒液を浸み込ませたコットンを強めに押し当てると、笑いながらごめんと謝罪してきた。
「私の家がダメならどこならいいんですか、紳士な深夜さん?」
色々言いながらもこうして私の家にいる時点で紳士ではないといえるだろう。
でも嫌味を込めて紳士と言わせてもらったのだ。
深夜
「……僕の部屋とか?」
「あのさ、私が深夜の部屋に出入りしたらどうなるかわかって言ってるでしょ?」
深夜の答えは全く笑えない冗談だった。
婚約者がいる深夜の部屋へ行動を共にしている女子生徒が入ったとなれば、私ではなく深夜自身の立場が悪くなる。