怨念の一輪草【終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅】
第10章 本当の実力と柊のやり方
深夜
「……麻酔針だよ」
「暮人がやった?」
この場にいる人で可能性のある暮人の名前を挙げるが、深夜は首を振る。
深夜
「この体育館にグレンへ殺気を向けている奴が何人かいる」
「……!」
深夜に言われるまで全く気づかなかった。
恐らくグレンもその殺気に反応できたからこそ、あの発言が出たのだろう。
「…………」
こんな状態でも気配に気づける深夜と、暮人に集中しながらも殺気に反応したグレン。
そして少し離れた位置にいて、負傷もしていないのに全く気づけなかった私。
その事実で先程深夜に惜しいと言った時に感じた、大きすぎる実力差を改めて強く実感させられた。
深夜
「……愛梨ちゃん?」
顔を強張らせている私に異変を感じたのだろう。
心配そうな瞳に見上げられるが、私は答える事ができなかった。
なにせ、私の頭はこれからどうすればいいのかという事でいっぱいだったのだ。
私がここに来た目的はただ1つ。
柊の実子を全員殺す事だ。
でも私は自分の実力を過信していたらしい。
「もっと強くならないと……」
そうでないと私が生きている意味がなくなってしまう。
そんな焦燥感に駆られた私は、意識を失ったグレンを運び出す人達をぼんやりと見ている事しかできなかった。
*****
深夜
「簡単にで大丈夫だよ」
「わかったから動かないで」
どこかへ運ばれて行くグレンと共にあっさり姿を消してしまった暮人。