怨念の一輪草【終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅】
第10章 本当の実力と柊のやり方
グレン
「っ」
その蹴りを肘で受け、すぐに足を切り落とそうと刀を振る。
だがその攻撃も間に合わず、数歩下がった暮人は体勢を立て直してしまった。
グレン
「…………」
それを見て、グレンも後ろへ下がって体勢を立て直す。
「これは思ったより……」
深夜
「……強かった?」
思わず呟いてしまった心の声。
その声が聞こえていたのは、私に体重を預けている深夜だけのようだ。
「惜しいけどちょっと違うかな」
深夜
「あれ?あんなに愛梨ちゃんの考えている事なら読めてたのにな……」
「……それだけ重症って事だよ」
会話を始めたグレンと暮人から視線を深夜に向ける。
私がいるから何とか体を起こせている深夜の顔色はかなり悪い。
養子とはいえ、よく弟相手にここまで遠慮なく殴れるものだ。
深夜
「グレンと兄さん、どうなってる?」
「…………」
体の痛みが酷いらしく、目を閉じて更に体重をかけけてくる。
こんな重体になってもあまり自身を気にしていない事から、深夜にとって義理の兄から殴られるという状況は珍しくないのだと思われた。
さすがにこれは以前にも殴られた事があるのか、なんて本人には聞けないので推測で終わってしまう話だ。
だからこの件は頭の片隅に追いやり、深夜の質問に答える為に再度視線を向ける。
暮人
「この学校で誰が1番強いか決めようじゃないか」