怨念の一輪草【終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅】
第4章 子供時代
男の人は押しつけるような言い方ではなく、あくまでも優しくそう言った。
「………」
それでも私は何も言えない。
確かに人は今まで殺してきた。
だからといってあれ程すごい人達だと教えられてきた柊の人間を殺すのはさすがに抵抗があったのだ。
若い男
「…さっき君に説明した人は僕の父親なんだ」
「え…」
私が何も言わないからか、男の人はそんな事を言い出した。
脈絡がないように感じて私は首を傾げる。
若い男
「父さんの事だから考えていいって言っただろうけど僕としては早く決断をして欲しい」
「………」
でも脈絡がない訳ではなかった。
男の人は最初から私を説得しようとしていたのだ。
若い男
「父さんは病気なんだ。もう死んでもおかしくないくらいなんだよ」
「そんな風には…」
年配だったけれど、すぐに亡くなりそうな人にはとてもじゃないが見えなかった。
でも男の人の表情からは嘘をついているようにも見えない。
若い男
「見えなかった?それはね、せめて自分の代で復讐をしてくれる女の子を見つけないといけないっていう責任感だよ」
確かに男性から聞いた話では零崎家が誕生してからもう500年近くも経っているのだ。
ここまで女の子が産まれないと焦っても当然だろう。
「それなら私じゃなくても…」
ただ私が気になるのはこれだ。
どうしてこの人達は私に拘るのか。