怨念の一輪草【終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅】
第9章 戻った日常
「意識はある…」
まずはそこを安心する。
これで気を失っていたら私は完全に冷静さを失っていただろう。
深夜
「今、どうなってる…?」
絞り出したような声でされた質問に答える為、私は暮人の方へと視線を向けた。
暮人
「十条 美十。お前は一瀬 グレンの恋人か何かなのか?」
美十
「え、いやそういう訳では…」
暮人
「ならなんだ」
どうやら今、暮人からの追求を受けているのは美十らしい。
恐らくいつもの正義感でグレンを庇うような事を言ったのだ。
そのせいで暮人の元からほとんどなかったであろう信頼が完全になくなっている事など美十は気づかない。
「深夜のお仲間ができたみたい」
深夜
「はは…、何それ」
私の言葉に力なく笑う深夜。
「十条 美十もたった今調査対象に入ったよ」
深夜
「…あー、そういう事か」
これだけで深夜には今起きている事が伝わったようだ。
相変わらず察しが良くて助かる。
グレン
「………」
「?」
そんな中、1番この話に関わっているグレンが困ったように天井を見上げたのに気がついた。
この状況で暮人から視線を外す理由は何か。
グレン
「…逃げられねぇかな」
「…!」
多分近くにいる人でも聞こえていないグレンの呟き。
それを私は彼の口の動きが運良く読めたからこそ、グレンが何をしようとしているのかすぐに理解した。