怨念の一輪草【終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅】
第9章 戻った日常
だから私は近づきたい気持ちをなんとか堪えて、立ち止まる。
深夜
「………」
そんな私に微笑んだ深夜。
でも次の瞬間、深夜は私の目の前にはもういなかった。
深夜
「ぐぁっ…!?」
深夜は暮人に頬を殴り飛ばされてしまったのだ。
後方へと吹っ飛ばされた深夜を見たらもう我慢ができなかった。
「深夜!!」
半ば悲鳴のような声で名前を呼びながら、私は飛ばされた方へと駆け寄る。
深夜
「うっ…」
呻き声を上げる彼は床に倒れたまま起き上がる事ができない。
「…っ」
しかも深夜のこれは演技ではなく、本当に体の痛みで起き上がれないのだ。
下手すると気を失っている可能性すらある。
暮人
「お前は今のでペナルティ1だ。信用度を下げ、百夜教と結びついていないかの調査を始める」
深夜
「………」
そんな暮人の言葉にも深夜は答えなかったのだが、暮人は全く気にしていないようだ。
言いたい事だけ言って、もうこちらなんて見てもいない。
「………」
柊 暮人。
私も深夜の実力をまだ完全に把握している訳ではないが、先程の動きから暮人の方が遥かに実力は上なのだと思い知らされた。
もちろん、私よりも圧倒的に強い。
そしてそんな彼はグレンへと視線を向けていた。
でも私はグレンを気にせず、深夜を優先する。
「目、開けれる?」
深夜
「…っ」
痛みに顔を歪めながらも深夜はゆっくりと目を開けた。