怨念の一輪草【終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅】
第9章 戻った日常
だが、五士の方が弱かったという訳ではない。
美十の実力がほんの少しだけ五士を上回っていたというだけだ。
深夜
「次は僕ら?」
暮人
「いや…」
時刻は9時5分。
招集された時間を過ぎているのになぜか暮人は私達に指示を出さない。
何がしたいのか。
不思議に思った時だった。
「!」
聞こえてきた体育館の扉が開く音。
暮人
「遅刻だぞ、一瀬 グレン」
集まった視線の先にいたのは、私達と同じ時間に収集されたはずのグレン。
どうやら暮人はグレンを待っていたらしい。
グレン
「………」
冷たい声で窘められたグレンだが、すぐには返事せずに全体に視線を向けていた。
怪しまれないように顔を動かさないまま、状況を把握しようとしているのだろう。
グレン
「あの、すみません…」
そして素早く見終えてから謝罪を口にする。
グレン
「ちょっとお腹を下して、トイレに行ってました…」
「………」
深夜
「はは」
遅刻した理由を申し訳なさそうに言っているが、恐らく嘘だ。
横で笑っている深夜もそう思っているに決まっている。
深夜
「突然の試合に緊張でもしたのか?本当に弱いなぁ」
だからこそバカにした発言をしたのだ。
これでグレンは弱いのだという評価に信憑性が高まる。
美十
「そんな弱い精神力でこの学校に来るなんてどうかしてると思います」