怨念の一輪草【終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅】
第9章 戻った日常
深夜曰く、私は顔に出やすいらしい。
だからこその注意だったのだろう。
「ん、気をつける」
深夜
「じゃあ開けるよ」
目の前にある体育館の扉へと手をかけてこちらを見てくる深夜へと頷く。
そんな私を見て、深夜は扉を開けた。
「もうやってるみたい?」
深夜
「だね」
既に体育館では戦闘が始まっている。
美十
「ふっ、甘いですよ」
五士
「やっべ…」
近づくと、戦っているのは美十と五士だった。
そういえば2人は私達よりも早く呼ばれていたはずだ。
だからそろそろどちらかの体力がつき、この試合も終わりを告げる。
深夜
「愛梨ちゃん、あれ見て」
「…?」
試合が終わるまでは特に指示もないようなので観戦していた私に、深夜は小さな声でそう言った。
「!」
言われた方向にいたのは1人の男。
その人を見た私は目が逸らせなかった。
深夜
「あれが柊 暮人」
「へぇ…」
短い紹介をしてもらい、私はすっと視線を逸らす。
柊 暮人。
恐ろしい程に感情が感じられない男。
あんな男、隙を見て殺すなんてできるのだろうか。
「はぁ…」
内部調査の事だけでも不安なのに、更に心配事が増えてしまった。
暮人
「十条美十だな」
そんな時に聞こえてきた暮人の呟き。
視線を2人へと向けると、その言葉通り勝負はついていた。
勝者は美十。