怨念の一輪草【終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅】
第9章 戻った日常
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指定された時間に間に合うよう、私は深夜と共に体育館へ向かっていた。
「深夜とがいいな」
深夜
「何が?」
脈絡もなく突然呟いた私に深夜は驚いている。
確かにこれだけでは意味がわからないはずだ。
「試合相手」
だからそう付け加えた。
深夜
「え、なんで?」
「だってその方が上手く負けれそうだから」
もし美十や五士、又は同等の実力を持つ人との試合ならどうだろうか。
負けようとして手を抜いている事に気づかれるかもしれない。
気づかれなかったとしても、痛めつけられてしまうだろう。
だからこそ仲間である深夜がいいのだ。
「負けたいけど入院レベルの怪我はしたくないし」
深夜
「確かにね〜。というか最悪その怪我を理由に辞退するって手もあるよ」
「なるほど…」
確かに私はあの襲撃で重症を負った。
あれから日が経っているが、今でも左腕は少し痛む。
つまり本気で戦っても勝てる可能性が低いという事だ。
「言ってみる価値はありそう」
深夜
「だろ?暮人兄さんだったらそれでもやれって言いそうだけどね」
「…体育館にいると思う?」
この質問は、単純に暮人も招集されているのかと聞いているのではない。
内部調査の為にいるのかという質問だ。
深夜
「いるよ」
「断定できるんだ?」
深夜
「うん。だからここからは全ての反応を見られてると思った方がいい」