怨念の一輪草【終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅】
第9章 戻った日常
呆れたような顔をした深夜は、腕を掴んでその拳を止める。
そして間髪入れずに押し返した。
グレン
「…っ」
深夜
「ふっ」
バランスを崩して体制が低くなったグレン。
そんな彼に、深夜は鮮やかな蹴りを放つ。
「うわ、顔狙う…?」
グレン
「ほんとだよ。殴るって言ったくせに…」
深夜
「あは」
不満を漏らしてから、グレンは後ろに吹っ飛んだ。
派手に飛んだが、実際はそこまでの威力はなかっただろう。
男子生徒1
「深夜様!さすがです!」
女子生徒1
「ふふ、カッコ悪ー」
その無様な姿に盛り上がる生徒達。
それを不快に思いながらも、私も口角だけは上げていた。
ここで笑っていないと怪しまれるからだ。
「ね、もう行こうよ」
でもこんな光景を見て笑っているような人達と一緒にはなりたくない。
そんな思いから、深夜にそう声をかけた。
深夜
「そうだね」
深夜はすぐ了承してくれたので、私は彼と共に歩き始める。
グレン
「…お偉い生徒会長様に通用するかねぇ」
私達が向かっているのはグレンが倒れている方ではない。
だが、そんなグレンの呟きがポツリと聞こえてきた気がした。
「………」
暮人は今の茶番で納得するようなバカなのだろうか。
私は柊 暮人の事をよく知らないのでわからないが、そんなバカなら自らあそこで監視する訳がないと思う。