怨念の一輪草【終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅】
第9章 戻った日常
グレン
「………」
深夜
「だって君の信用を得る為には言うしかないだろ?」
訝しげな表情を浮かべるグレンに、深夜は仕方なさそうに笑いかける。
深夜
「内部調査が始まるよ」
グレン
「当然だな」
深夜が明かした情報にグレンは驚かなかった。
それどころか言われる前からわかっていたらしい。
でも少し賢い人なら誰でもそうなるだろうと予測はできる事だ。
「あの襲撃のやり方だと内部の手引きがあったってわかるよね」
グレン
「ああ。それにわざわざ調査するって事は…」
深夜
「真昼が裏切り者だって事はバレてないよ」
そう、そういう事になる。
あの襲撃で真昼だけ連れ去られたという事から、裏切り者は真昼ではないかと思ってもおかしくない。
なのに真昼ではなく、他の人間が疑われている。
深夜
「彼女は父親の柊 天利(ひいらぎ てんり)様に信用されてたし、潜在的な力は暮人以上だと言われていたから」
「期待されてたって事ね」
深夜
「そうそう」
父親であり現当主である柊 天利が真昼を信じているのだ。
それなら疑われない事に納得できる。
グレン
「そりゃ、婚約者としては鼻が高いな」
するとグレンは嫌味のようにそんな事を言い始めた。
深夜
「君の元彼女だろ」
グレン
「ガキの頃の話だ。もう忘れた」
深夜
「真昼はずっと君の話ばかりしてたけどね」