怨念の一輪草【終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅】
第4章 子供時代
見覚えがないので施設に来る前の知り合いでもないはずだ。
なのに何故私を見て泣くのか。
「あの…?」
年配の男
「いや、ごめんね。君があまりにも似ていたものだから…」
そう言って涙を拭った男性に敵意は感じられない。
だから姿勢を正して男性と向き合う。
「誰に似ているんですか?」
年配の男
「ご先祖様だよ」
「ご先祖様…?」
質問をすると、男性は悩むそぶりも見せずに教えてくれた。
施設だと質問なんて許されなかったのであっさり教えてくれた彼に気を許すのは無理もない。
私は完全に警戒を解いていた。
年配の男
「そう、顔は似てない。でも君の髪は話に聞いていたご先祖様やその血を引く私達、そして一瀬のご子息にもそっくりだ」
確かに先程の若い男性もこの男性も私と同じ紫に近い色をしている。
でも気になる事ができた。
「私の髪色が一瀬のご子息と…?」
ここで一瀬の名前が出るという事は彼らは一瀬家の関係者なのかもしれない。
一瀬家はもう会う事もない両親から聞いた事があった。
柊を裏切った最悪の一族。
同い年の一瀬の息子よりは絶対に優秀になれ。
何度も言い聞かせられた言葉が頭をよぎったが、もう関係のない事だ。
気にしないように俯いていた顔をあげると、男性と目が合った。
年配の男
「あの施設にいたんだ。君も一瀬家の扱いを知っているだろう?」
「…はい」