怨念の一輪草【終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅】
第8章 乱入者
深夜
「だーめ」
でも深夜は降ろしてくれない。
「ねぇ、本当に嫌なんだって」
だから先程よりも強めに、深夜の目を見てから訴えた。
これで本気だとわかって欲しい。
深夜
「………」
「………」
立ち止まった深夜と見つめ合う。
深夜
「…わかったよ」
そして数秒後、深夜は折れてくれた。
不自然に思われたかもしれない。
それでも帝ノ鬼の人に見られる事は避けれただけ良かったと思うべきだろう。
「………」
暗くならないよう前向きに考えていると、とある事に気づいた。
「…深夜」
深夜
「何?」
名前を呼ぶと笑顔でこちらを見下ろす深夜。
そんな彼の足は今、動いていた。
「降ろしてくれるんじゃなかった?」
深夜
「え?僕そんな事言ったっけ?」
「………」
思わず黙ってしまう。
深夜はわかったとは言った。
でも降ろすとは口にしていない。
「でもわかったって…」
深夜
「うん、言ったよ。でもそれは降ろす事についてとは言ってないよね」
「そうだけど」
それでは深夜は何に対して理解したのだろうか。
深夜
「僕がわかったって言ったのは、彼らの元へ連れて行かないでってお願いに対してだよ」
「連れて行かないのなら私を運ぶ必要ないでしょ」
ますます意味がわからなくなった。
だから今も尚、歩き続ける彼の言葉を待つ。