怨念の一輪草【終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅】
第8章 乱入者
深夜
「ちょっとごめんね〜」
「え…?」
私の横にしゃがみこんだ深夜。
何がしたいのだろうか。
不思議に思いつつもそのまま見ていると、深夜がこちらに手を伸ばしてきた。
「ちょ、ちょっと…!」
突然の浮遊感。
私は深夜に抱き抱えられていたのだ。
意味がわからず、降りようともがく。
深夜
「あ、あんまり暴れると落としちゃうよ」
「落とすって…」
するといい笑顔でそんな事を言ってきた。
この高さから落とされると更に怪我をしそうなので、私はピタリと抵抗をやめる。
深夜
「そうそう。じっとしててね」
「………」
そう言って深夜はどこかへと歩き始めた。
「…どこに連れてくの?」
深夜
「さあ、どこでしょう?」
「そういうのいいから…」
目を閉じて痛みを堪えながら、深夜に力なく返事をする。
万全の状態なら話にのってあげてもよかったが、今は無理だ。
深夜
「あはは、元気ないね」
「………」
深夜
「そんな愛梨ちゃんにピッタリの救護中の部隊の所だよ」
「え…」
百夜教が撤退してから帝ノ鬼の部隊が怪我人を助けている。
深夜はそこに私を連れて行こうとしているらしい。
「おろして」
深夜
「え?」
「軽傷だし診てもらう程の怪我じゃないから」
本当は重症だ。
でも柊側の人間に怪我を診られるのは抵抗がある。