怨念の一輪草【終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅】
第8章 乱入者
深夜
「彼らにして欲しくないなら僕が手当てするしかないでしょ?だから保健室に運んでるんだよ」
「いや、手当てしなくていいって」
深夜
「そんな事言うならあっちに連れてくよ」
あっちとはもちろん帝ノ鬼の隊員の所だ。
そう言われては仕方ない。
「…別にいいって言ってるのに」
深夜
「あはは、今回は僕の勝ちだね」
「うるさい」
そんなに得意げな顔言われると無理矢理にでも降りたいが、なんとか堪えた。
私が短く言い返すと、それすらも楽しそうに笑う深夜。
もう今回は確実に負けを認めるしかなさそうだ。
「…でもなんで怪我してる事わかったの?」
斉藤は強かったし、色んな情報が飛び交って私を気にする暇なんてなかったと思われる。
深夜
「うーん。勘?」
「真面目に答えて」
深夜
「おー、怖い怖い」
勘な訳がない。
あの時、深夜は確信を持っているように近づいてきた。
だからそれで納得せずに追求を続ける。
深夜
「じゃあ真面目に話すけど、斉藤との戦闘中に左腕を庇ってたろ?」
「…!」
気づかれていた。
あんなに緊迫した状況だったのにも関わらず、深夜は私の事までしっかり見ていたのだ。
深夜
「まあ、その怪我を手当してる時に色々お話しようよ」
「…気が向けばね」
グレンはもちろんだが、深夜も油断ならない人物だと改めて認識する。
面倒な2人の秘密を知ってしまった私のこれからはどうなるのだろうか。
若干の不安を感じつつ、私は再び目を閉じたのだった。