怨念の一輪草【終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅】
第8章 乱入者
それからしばらくは話していたのだが、深夜が首を振って話を遮った。
深夜の表情は更に冷たいものになっている。
そして話が終わったのか、深夜はグレンから離れた。
「え?」
でも彼はこちらへ戻っては来ない。
それどころか、今試合が終わったばかりの試合場へと向かっている。
深夜の試合はまだ先のはずだ。
監督官1
「1年4組、柊 征志郎。前へ」
呼ばれた征志郎が試合場に上がっていく。
対戦相手は間違いなくグレン。
監督官1
「1年9組、一瀬 グレン。前へ」
私の記憶は合っていた。
それなのに試合場へと上がったのはグレンではなく、深夜。
おかしな事態に生徒達がざわめき始める。
五士
「おい、グレン」
美十
「これはどういう事ですか?」
五士と美十はグレンへと事情を聞きに行っていた。
私もそちらへと近づいて話を聞こうかと思ったが、試合場を見てだいたいの事を察する。
征志郎
「ははは!」
征志郎が笑っているのだ。
酷くバカにした様子でグレンを見ている。
恐らくだが、辞退するのだろう。
征志郎
「女ボコボコにされてんのに逃げんのか?さすが一瀬はクズだなー」
「…やっぱり」
本当に辞退するらしい。
話を聞いただけだが、従者が病院送りにされたのになんとも思わないのか。
深夜が嫌な顔をしている理由がよくわかった。
そして征志郎の言葉で察した生徒達からも罵倒や嘲笑が上がり始めている。