怨念の一輪草【終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅】
第8章 乱入者
それどころか初めて対等に話せる相手である深夜とこうしている事が、とても楽しく感じ始めていたのだ。
深夜
「そういえば昨日は帰って正解だったと思うよ」
「何かあったの?」
特に内容のない会話をしながら演習場につくと、そんな事を言い始めた深夜。
その言い方から何か良くない事がおきたのは明らかだ。
深夜
「あの後グレンの従者の子と征志郎の試合があったんだ」
「…それで?」
嫌な予感がした。
もう1人の従者でも全く歯が立たなかったのだ。
それに一瀬の呪法を使わないと従者達が決めているとしたら、絶対に勝てない。
深夜
「入院レベルまで痛めつけられたよ。監督官が勝敗がついてたのにわざと言わなかったんだ」
「何それ…」
想定以上の酷さに言葉が出てこなかった。
私が見た試合は少ないが、そんな状態になった生徒はいない。
一瀬の従者だからこそこんな事になったのだ。
深夜
「真昼が助けに入ったから収まったけど、下手したら死んでただろうね」
「本当に有り得ない」
正式な試合なのに監督官がそんな事をしていい訳がない。
その現場を見ていないのに、怒りが込み上げてくる。
「それで帰って正解って訳ね」
深夜
「うん。それに愛梨ちゃんなら行っちゃうでしょ?」
「?」
どういう意味だろうか。
首を傾げて深夜を見る。
深夜
「助けにだよ。あの時雨って子の時みたいに」