怨念の一輪草【終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅】
第8章 乱入者
選抜術式試験2日目。
いつも通り予鈴の前に登校すると、担任から声をかけられた。
担任
「深夜様から聞いたけど体調の方は大丈夫なの?」
どうやら深夜は上手く話しておいてくれたらしい。
「はい。今日の試合も大丈夫です」
担任
「それは良かったわ。深夜様も気にしてるみたいだし、期待してるからね!」
「…期待に応えられるように頑張ります」
担任は私の返事を聞いて、満足気に去って行った。
深夜が何か言ったのだろうか。
担任から変に期待されている。
教師にまで深夜と親しいと思われている事を改めて理解し、頭が痛くなりそうだった。
深夜
「おはよ」
そんな時に私の前に現れたのは先程名前が出たこの男。
朝にふさわしいくらいに爽やかな笑顔を浮かべる彼は昇降口で誰かを待っていたらしい。
「おはようございます」
深夜
「また敬語?でももうそんな事しなくていいと思うけどね」
「やっぱり昨日のでもう手遅れ?」
深夜
「そうそう」
深夜の言う通り、話している私達を見て驚く生徒は1人もいなかった。
ならばもう気を遣わなくていい。
「じゃあ深夜、昨日はありがと」
深夜
「いえいえ。体調はどう?」
「深夜の顔みたら悪くなった気がする」
深夜
「酷いなー」
軽口を叩きながら演習場へと向かう姿は本当に友達のようだろう。
それに私はこの状況を嫌だと思えなかった。