第11章 ここからが本番
「すごい吹雪だねぇ」
体の芯から凍りつく風が豪雪を踏みつけ駆ける私達に吹き付ける
天候は思いのほか悪く、頂上よりも街の方が雪が積もっていた
「ネズ!」
白と黒のタチフサグマのような髪の毛の彼を呼ぶと、こちらを振り返って歩いてくる
「わざわざすみませんでしたね。助かりますよ」
「いいよいいよ、ほら、乗って?…あっ、結構寒いけど大丈夫?さっき追い風だったから、次向かい風かも」
えっ、と固まるネズ。相当寒いのが嫌なんだろう
仕方ないか、と私は自分のジャケットを脱ぐ
いきなり脱ぎ出した私に対してネズは驚いたような顔をしていた
「ネズ、これ着て。」
「……は?」
ネズside
4連戦に敗北したオレは、気晴らしの為にマイに会いに行った
エキシビションマッチやリーグマッチが開催されない今の時期なら、バトルに飢えているマイがジムチャレンジャーを返り討ちにすると思ったからだ
だけど、生憎今日のウェルズタウンの天候は最悪。
マイに電話すると、暇そうな返事が返って来たので多分迎えに来てくれるだろう
「ネズ!」
聞き覚えのある声がオレを呼ぶ
声のする方向を向くとマイが異様にデカいウインディに乗ってこちらに手を振っていた
「わざわざすみませんでしたね。助かりますよ」
オレがそう言うと、彼女は優しく笑っていいよいいよ、と言った
ああ……可愛いですね。
不覚にも胸がときめいた
けどそれも束の間で、次のマイの言葉と行動でオレは動揺した
「ネズ、これ着て。」
「は?」
いや、さすがに。
オレがマイの服を着ると思うんですか?
そんな事したらキバナに呪われますよ
「いや、無理ですよ。第一、おまえが寒いでしょう」
「え?私は大丈夫。あっ、着るの嫌?じゃあ私の服の中入る?二人羽織みたいに」
そういう問題じゃないでしょう
ただでさえ露出が高い服装なのだから、もう少し気を使って欲しいと言っているんですよ
結局、2択だよ?なんて可愛い顔で言う彼女に逆らえず、消去法でジャケットを借りることになるんですけどね
「ちゃんと捕まらないと落とすからね」
脅しのように言う彼女の腰を控え気味に掴むと、手を握られ、ぐっと前へ引かれる
「行くよ、髪当たったらごめんね」
「は、はい……」