第12章 波乱のジムチャレンジ
「おつかれ」
「……おう」
疲れきった表情で、歩く度にパラパラと砂を落としながら彼は控え室に現れた
私の隣にドカッと座ると、思い切り私に寄りかかってくる
私はそれを受け止めて自分の太ももに誘導する
俗に言う膝枕。
普段の私ならドキドキしたり、不自然な感じになってしまうかもしれない。
けど、これはいつものこと。
下心とか、そういうのは無い
何年も何年も前から続けている慰め方
優しく撫でて、砂を払って
「はああ〜〜」
「…どうだった?」
「強えーよ、アイツ。まじで」
「私も戦いたかったなあ……」
遠い目をしながらぼんやりつぶやく
もしかしたら、あの子はダンデをも打ち破るかもしれないな……
「オレさまのこともっと慰めてよ」
「え?う〜ん……」
ぽんぽんと頭を撫でると、もっと、と催促される
……いい大人が何言ってんだか
でも、可愛い……
「あ、キバナ、始まるみたいだよ」
「マジ?」
ほら、とモニターを指差すと彼はそれに釘付けになる
『コートの張りつめた空気、それとは真逆の観客の熱狂……どちらも最高じゃないか!』
放送で響く彼の声に観客はますます熱狂する
ついに最終決戦。どちらが真の王者かが決まる
『いいかい?彼ら観客はどちらかが負けることを願う残酷な人々でもある!』
『そんな怖さをはねのけポケモントレーナーとしての全てを、チームの全てを出し切って勝利をもぎとるのがオレは好きで好きでたまらない!』
『オレの最高のパートナーたちもボールの中でうずうずしている、さあ!チャンピオンタイムだ!』
『ガラル地方チャンピオンダンデとパートナーリザードンたちがこれまで得た経験知識でキミたちのすべてをうちくだくぜ!』
チャンピオンらしい堂々とした振る舞いに息を飲む
2人がそれぞれの立ち位置に付いてバトル開始……!!!!
と、思いきや、コートのバックスクリーンの画面がいきなり暗転した