第12章 波乱のジムチャレンジ
キバナside
何も考えずに控え室に備え付きのロッカーに座っていた。
別に緊張してるとかじゃない
ただ、今行われている試合の結果が知りたくないだけだ
ほのおタイプVSこおりタイプ
圧倒的にマイが不利の試合だ
オレは最初、誰かが仕組んだんじゃないかと疑った
けど、誰もそんな様子なくて、マイも張り切っていたから何も言えなかった。
……なのに
無情にも控え室のモニターから、試合終了の合図が聞こえた
やめてくれ、聞きたくない
オレは周りの音が聞こえないくらいに耳を塞ぐ
彼女が悲しむ顔なんか見たくない
「お疲れ様で〜す」
マイが戻ってきた
……やけにのほほんとしてるな……
少しだけ目を開けると、そこには、オレの目の前に立ちはだかるマイの姿
全身水を被ったように濡れていて、それでもって表情は試合前後のクールな表情。
いつもみたいな可愛い感じじゃなくて、美しいって感じ。
「あれ、マイ、、」
オレは、心做しか少し小さい声を出した
「なに?」
オレの上の棚にあったタオルを取り出したマイは、オレの表情を見て察したようににやっと笑った
そして、自分の額とオレの額をピッタリくっつけてこう言った
「もしかして……私が負けると思った?そうよね、私のこおりタイプの使い手だもん……けどねキバナ、そんなことは関係ないの。私が何タイプの"技"を使おうが自由でしょ?」
「へっ…?」
オレの目の前、その距離わずか2センチ
普段は聞くことのない、マイの落ち着いた艶っぽい声にオレの心は甘く痺れる
「ダンデばっかり相手しないで、楽しませないで?私のこともちゃんと楽しませてよ……。ね?」
トンッ、とオレの顎を人差し指で軽く押したマイはさっさとシャワーを浴びに行った
ドクドクとオレの心拍が急上昇していく
いや、あれはだめだろ、
誰もいない控え室で一人、オレは自身の顔を暫く覆っていた。