第9章 忍流風邪の治し方
「悪かったな…お前の体の異変に気付いてやれなくて…」
「…え……?」
「慣れない環境で生活してた上に、俺が色んな所に連れ回しちまったから疲れが出たんだろ」
「ち、違います…!」
自分を責める元親を見て雪乃は胸を痛める。
「元親さんのせいじゃありません…。元親さんがいつも私に気を遣ってくれてる事……知ってますから…」
「雪乃…」
「だから…そんな顔しないで下さい」
「…ハァ……ったく、お前はホントにお人好しだな」
弱々しく微笑む彼女に元親は溜め息をついた。
「そうだ…水飲めるか?つーか欲しくなくても水分補給はしとけ」
「はい…」
彼に背中を支えられ何とか起き上がる。
こんなに熱が上がったのはかなり久しぶりだ。
「そう言えば、政宗さんたちは……」
「俺が言うのも何だが、アイツもあれで一国の主だからな。城を空けてる間に溜まった執務業を片付けてるみたいだぜ」
「そうですか…」
彼にも後で謝っておかなければ。
「何か欲しいもん無ぇか?出来れば少しくらい飯も食った方がいいと思うが…」
「…すみません……今はまだちょっと…」
「そうか…ならもう少し寝てろ。俺はしばらく此処にいる」
そう促され再び布団の中に入る。
優しく頭を撫でられると、すぐにまた睡魔が襲ってきた。
「…元親さん……ありがとうございます…」
「…ああ…おやすみ」
眠りに就いた雪乃を見て、元親はその額にそっと唇を寄せた…
(…あれ……もう夜…?)
次に雪乃が目を覚ますと、辺りはすでに真っ暗だった。
傍にあった行灯の光が部屋の中を淡く照らしている。
(結構寝ちゃってたみたい…)
部屋には自分以外誰もいない。
元親も自分の部屋に戻ったのだろう。
(…あれ?)
ふと、枕元に何か置いてある事に気付く。
それは元親からの置き手紙で…自分は隣の部屋にいるから、何かあったらすぐに呼べという内容の物だった。
けれどよく眠ったせいか、昼間より熱は大分下がっている。
少しお腹も空いているが、このまま朝まで横になっていようか……そう思った時。
「…起きたか」
「…!」
暗闇の中、聞き慣れた声が響いた。
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