第9章 忍流風邪の治し方
「やっと城が見えてきたぜ」
上田城を出て数日…
ようやく奥州へと辿り着いた雪乃たち。
船着き場に船を預けた彼らは再び馬に乗り、政宗が居城としている青葉城へと向かっていた。
「…雪乃?」
ふと元親に背を預けていた雪乃の体が更に彼の方へ傾く。
不思議に思ってその顔を覗き込むと、彼女は赤い顔で荒い呼吸を繰り返していた。
「ッ…、雪乃!?どうした!?」
「………」
気を失っているらしい彼女は返事をしない。
どうやら高熱で意識を失くしてしまったようだ。
「西海の鬼、どうかしたのか?」
前を走っていた政宗が元親の声を聞き、馬のスピードを緩める。
そしてすぐ彼女の異変に気付いた。
「雪乃!?」
「すげぇ熱だ!早く休ませてやらねぇと!」
「チッ、同じ馬に乗ってたくせになんで気付かなかったんだ!」
「………」
政宗にそう責められ、返す言葉も見つからない。
彼の言う通りだ。
先程から口数が少ないとは思っていたが、何故雪乃の異変にもっと早く気付いてやれなかったのか。
(すまねぇ…!)
彼らは更に馬のスピードを上げ城を目指した…
*
「…ん……」
ふわふわした意識の中、雪乃はゆっくりと瞼を開けた。
何故か視界も頭もぼんやりしている。
「雪乃…!気が付いたか!」
「……、元親さん…?」
血相を変えている彼の顔を見て起き上がろうとするも、体が言う事を聞かない。
「ばっ…まだ起きるんじゃねぇ!」
「……、」
そう言われ無理矢理寝かされる。
今だに状況が把握出来ていないが、どうやら自分は布団の上に寝かされているらしい。
「お前…ここに来る途中、高熱で気を失ったんだ」
「………」
元親の話を聞いてようやく今の状況が理解出来た。
この体の怠さも、意識が朦朧としているのも熱のせいなのだと。
「すみません…私、皆さんにご迷惑を…」
「バカ…誰も迷惑だなんて思っちゃいねぇよ。つーか具合悪ぃなら、なんでもっと早く言わなかったんだ」
「……、」
確かに体が怠いとは思っていたが、まさか気を失う程熱が上がっていたなんて自分でも気付いていなかった。
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