第9章 忍流風邪の治し方
「…そうだったのか。辛い事思い出させちまってすまなかったな」
「いえ…気にしないで下さい」
雪乃はまだ兄の死の原因究明を諦めた訳ではない。
勿論、衰退していく神社の事もだ。
「俺はお前の兄貴とは似ても似つかねぇと思うが…その…もう1人の兄貴だと思って何でも頼ってくれよ」
「元親さん…」
そう言ってくれるのは本当に嬉しい。
彼の言葉はこれまでも自分を励ましてくれたのだから…
(本当は兄貴って器だけに収まりたくはねぇんだがな…)
それが元親の本音。
自分は明らかに雪乃をひとりの"オンナ"として意識し始めている。
けれどいつかは彼女を元の世界へ帰してやらなければならない。
これ以上彼女に深入りすれば、別れが辛くなるだろう。
(鬼ヶ島の鬼が、何らしくねぇ事考えてんだ…)
元親はそう心の中で苦笑し、雪乃の頭を優しく撫でた…
続