第7章 上田城での騒動
色々な事があり過ぎて、本来の目的を忘れるところだった。
ここには飽くまでも雨宿りと休息の為に寄ったのであって(佐助は迷惑がっていたが)、自分たちは奥州に向かっていたのだ。
天気が崩れないうちに早いところ出発しなければ…
「つー訳だ。出発の準備したら、今夜は早く寝ろよ?」
「は、はい…分かりました」
そう頷く雪乃の頭を今度は優しく撫でると、「おやすみ」と言って元親は出ていった。
「……ハァ」
部屋を出てすぐに溜め息をついた元親。
(あのバカ…)
先程の雪乃の表情を思い出して悪態をつく。
彼女はあんなに色っぽかっただろうか?
表面上は彼女に対して良い兄でいなければと思っていたが、あんな顔を見せられてはその自信も無くなってくる。
(…酒の所為だよな)
無理矢理自分にそう言い聞かせ自室に戻った元親は、これ以上余計な事を考えないようにと1人酒を呷るのだった…
「昨日はうちの大将が随分世話になったみたいだね……雪乃ちゃん?」
「……、」
翌朝…朝食の席で佐助に嫌味を言われた。
幸村を気絶させたのは雪乃ではなく小太郎だったが、その原因が自分にあるので言い訳も出来ない。
「ん?なんかあったのか?」
2人のやり取りを傍で聞いていた元親がそう聞き返す。
そう言えば、幸村に襲われそうになった事を彼にはまだ話していなかった(話すつもりも無かったが)。
「大将、気絶する直前の事は覚えてないみたいなんだよねぇ…酒も入ってたし。まぁ何があったのかはだいたい想像つくけど」
「…すみません」
「まーたうちの大将が暴走して風魔に灸を据えられた……ってとこかな?」
「ぅ…」
「おい…まさかまた真田に何かされたんじゃねぇだろうな?」
「い、いえ…あの…」
本当の事を話したらきっとまた元親が怒り出すだろう。
何とか誤魔化そうとしていると、そこへ政宗と小十郎がやって来た。
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