第7章 上田城での騒動
「Good morning、雪乃」
「政宗さん、小十郎さん、おはようございま…」
そう挨拶し終わる前に、政宗の唇が雪乃の頬に触れる。
「…!」
「なっ…独眼竜テメェ、雪乃に何しやがる!」
「A~n、ただの挨拶だろ?悔しかったらアンタもすればいい」
「テメェ…」
「…毎朝お前も大変だな」
「……、」
他人事のように言ってくる小十郎に頭を撫でられ、雪乃はその場で小さくなるのだった…
「雪乃殿…本当に行ってしまわれるのか?」
そろそろ出発しようという雪乃たちを引き止めたのは幸村。
淋しそうなその顔に少しだけ胸がちくりと痛む。
「幸村さんも猿飛さんも…色々お世話になりました」
「奥州までの道中気を付けてねー。雪乃ちゃんだけならまた遊びに来てもいいよ」
「あ、ありがとうございます」
「雪乃殿!某、そなたに見合う男になるべく精進致す故、いつかは某の妻に…!」
「ケッ、まだ言ってんのか…寝言は寝て言え。雪乃行くぞ」
「きゃっ…」
元親に抱えられたかと思えば、早々と馬に乗せられる。
「も、元親さん!」
「ほら、出発するぞ。しっかり手綱握っとけ」
「わっ…!」
ろくに挨拶も出来ないまま馬は走り出した。
「もぅ…まだちゃんと挨拶出来てなかったのに…」
「いいんだよ、あんなヤツらに挨拶なんかしなくても」
「元親さん…」
「ハァ…こんな所寄るんじゃなかったな」
「え?」
「…何でもねぇ」
これと言った収穫も無く、雪乃に興味を持つ輩を増やしてしまっただけだ。
(奥州では何も無きゃいいが…)
そうは思いつつも、元親には嫌な予感しかしていなかった…
続