第7章 上田城での騒動
(よし、誰もいない)
今なら幸村とゆっくり話が出来る。
そう思って彼の方へ向き直った瞬間…
「…!」
突然彼に抱き締められた。
「ゆ、幸村さん!?」
「そ、某…女子に恥をかかせる訳にはいかぬ故!」
「え…?」
言っている意味が解らない。
「このような人気の無い場所へ連れて来るとは……そ、某を誘っているので御座ろう?」
「……はい?」
「女子に誘われてそれを断るなど、相手に失礼だと佐助に言われておる」
「………」
「契りを結ぶには些か早い気もするが…何れ夫婦になるなら然して問題も無かろう」
そこまで言われてようやく意味が解った。
彼が盛大な勘違いをしている事に。
「ちょ、ちょっと幸村さん、勘違いしないで下さい!私はあなたと話をしに…!」
「某未熟ではあるが……その…一応手順は心得ておる」
「話を聞いて下さい!」
(というか何の手順ですか!)
全く話を聞いてくれない幸村に雪乃は慌てる。
これでは話をするどころではない。
まずはこの状況を何とかしなくては…
(…こんな時、いつもなら……)
小太郎が助けに来てくれる。
ふと頭を過った彼の姿。
けれど助けを呼べば、また無茶な見返りを求められると思うと素直に呼べない。
(でもこの状況…一体どうすれば……)
そう頭をフル回転させていると、不意に体が宙を浮いた。
「えっ…」
そして次の瞬間畳の上に寝かされ、幸村が馬乗りになってくる。
「ゆ、幸村さん!?」
「辛かったら申すのだ」
「っ…」
(いやいやいや、幸村さん本気!?というか、女の人苦手なんじゃなかったの!?)
両腕をがっちり掴まれ身動きが取れない。
今度こそ絶体絶命だと思った時、雪乃は無意識に声を出していた。
「ふうまさん、助けて下さい!」
その瞬間、視界から消えた幸村。
ドサリと音がしたかと思えば、彼は俯せの状態で雪乃の隣に倒れていた。
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