第7章 上田城での騒動
「し、失礼致す!」
雪乃と佐助が話しているところに1人の男がやって来た……幸村だ。
「あれ、大将もう大丈夫なの?」
「へ、平気だ!」
そう言うものの彼の顔はまだ赤く染まっており、その声は上擦っている。
幸村は佐助の隣にきちっと正座すると、雪乃に向かって勢い良く頭を下げた。
「も、申し訳御座らん雪乃殿!」
「……、」
大きな声でそう謝られ圧倒される。
謝罪の理由は風呂場での件だろうが、まさか土下座までされるとは思わなかった。
「ゆ、幸村さん、顔を上げて下さい!私なら気にしてませんから!」
「そうは参らん!契りも交わしておらぬ女子(オナゴ)の裸を見てしまうなど…そ、某どうお詫びをすれば良いかっ…!」
「……、」
改めてそう言われると余計に恥ずかしい。
いっその事全て忘れてほしいところである。
「雪乃殿が望むなら…某、切腹する覚悟も出来ておる故!」
「えぇっ!」
時代劇でしか聞いた事のない言葉をまさかこんな所で聞く羽目になるとは…
「ゆ、幸村さん大袈裟です!そんな事で切腹なんて…」
「大袈裟などでは御座らん!恋仲でも無い男に裸を見られるなど、雪乃殿がどれ程傷付いた事か…!」
(いつからあなたは私になったんですか!)
自分の気持ちを勝手に代弁する幸村に、思わず心の中で突っ込んでしまう。
そう何度も「裸を見られた」と連呼される方が余程恥ずかしいのだが…
「あの……幸村さん、本当に気にしないで下さい。あなたに悪気があった訳ではありませんし、私も自分が入浴中だった事を言っておかなかったのが悪いんです」
「雪乃殿…」
そこまで言うと、幸村はようやく落ち着きを取り戻した。
そんな彼の様子を見てホッとしたのも束の間…
「ならば某、責任を取って……そ、その…」
「…?」
「そなたを妻に迎えまするゥゥゥウ!」
(どうしてそうなるの!?)
.