第7章 上田城での騒動
「…早くしろ」
「ぅ…」
「出来ぬのなら…」
「ま、待って下さい、まだ心の準備が…!」
そもそもどうして自分はこんな辱しめを受けているのだろう。
じっと恨めしげに小太郎を睨んだつもりだったが、何故か目の前にあった彼の喉仏が大きく上下したように見えた。
「…無意識に煽るな」
「え…?」
小さな声で呟いた小太郎が顔を逸らす。
その時だった…
「大将ー!今は雪乃ちゃんが入ってるから、湯浴みは後……に…」
「…!?」
そう叫ぶ声と共に開けられた湯殿の扉。
そこには佐助が立っていて。
「ちょっ、アンタら何して…!」
雪乃と小太郎の姿に素っ頓狂な声を上げる。
辛うじて手拭いで前を隠している雪乃。
そんな彼女を壁際に追い詰めている小太郎。
そして彼らの足元には、気絶しているらしい主の姿が…
「ていうかどういう状況ー!?」
「…まったく人んちの湯殿でフシダラな事するなんて、そんな子に育てた覚えはありません!」
「……、」
あの後着替えを済ませた雪乃は、佐助にくどくど説教されていた。
色んな意味で恥ずかしい現場を見られ、穴があったら入りたいとはまさにこの事だ。
「…しっかし、まさか雪乃ちゃんと風魔が恋仲だったとはねぇ」
「ち、違います!私たちそんな関係じゃ…」
「えー。じゃあ体だけの関係って事?」
「もっと違いますから!」
とんでもない事をさらっと言う彼に慌てて弁解する…自分は被害者なのだと。
「どちらにしろ、雪乃ちゃんが風魔のお気に入りだって事に変わりはないよね」
「……、」
果たして本当にそうなのだろうか?
ただ単にからかわれているだけのような気もする。
けれど…
『お前の事は俺が守る』
そう言ってくれた彼の言葉は嘘じゃないと信じたい。
(…もぅ…ふうまさんが解らないよ……)
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