第7章 上田城での騒動
「…フン、なかなか良い格好をしているではないか」
「…!い、今着替えますからあっち向いてて下さい!」
「…お前の指図は受けない」
「なっ…」
ジリジリと近付いてくる小太郎。
思わず後退りすれば、すぐに壁が背に当たった。
「…この男にも見せたのか?その肌を…」
「ちょっ…」
かろうじて肌を隠している手拭いに小太郎が指を掛けてくる。
その手を外させようにも、両手が塞がっている状態では満足に抵抗も出来ない。
「…よく覚えておけ。俺を動かしたければ、それ相応の報酬が必要だとな」
「……、」
随分と勝手な言い分だ。
呼んでもないのに現れたのは彼の方なのに…
けれどそんな事を口にしてしまったら、後でどんな仕置きが待ち受けているか考えただけでも恐ろしい。
「…それで?この傍迷惑な男を部屋へ運べばいいのか?」
「お、お願いします…」
「…ならば口付け一回で引き受けてやる……勿論お前からのな」
「…!」
とんでもない事を言い出す小太郎に耳を疑う。
そんな事をさせられるくらいなら、誰か他の人間に頼んだ方がマシだ。
「い、嫌ですよ!だったら私、他の人に……ゃっ」
不意に耳を舐められ、言葉を遮られる。
そして彼の唇は雪乃の首筋で止まり…
「…此処に痕を残されたくなければ言う事を聞け」
「…!」
(…痕を残すって……)
初な雪乃でもそれが何を意味するかは理解出来る。
小太郎はキスマークを付けようとしているのだ。
(じょ、冗談でしょ!?)
そんな目立つ場所にそんなものを付けられたら、誰に何を言われるか分かったものではない。
けれど返事をしない雪乃に痺れを切らしたのか、小太郎はいよいよそこに舌を這わせ始めた。
「ちょっ…、」
「…答えは決まったか」
「わ、わかりました!わかりましたから!」
慌ててそう言えば、一旦唇を離す小太郎。
勢いで了承してしまったとは言え、やはり自分からキスをする勇気など雪乃には無い。
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